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血液ガス
よくある質問にお答えします
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- 血液ガス分析装置のメンテナンスを実施することの重要性は?
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- 平成18年4月1日より施行されております医療法施行規則により「医療機器の製造業者、輸入販売業者等が提供する情報を活用し、医療機器の保守点検を適切に実施するよう努めなければならない」とされております。メーカーの推奨するメンテナンススケジュールに従ってメンテナンスを実施し、かつ記録を残すことにより突発的な故障が軽減され、常に測定誤差のない信頼できる血液ガスデータを得ることができます。
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- キャリブレーションが正常なのに、何故QC (精度管理)が必要なのですか?
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- キャリブレーションが電極の感度すなわち精度の管理を目的に行なわれるのに対し、QCは電極のみならず、サンプル経路を含めた測定機器全体の精度管理を行なうことを目的にしています。値のわかっている溶液を定期的に測定する事により、トラブルを未然に防ぐ事が可能になります。また、長期間のQC記録を保存することで、装置の稼動状態が的確に把握できます。このように、電極だけでなく機器全体の精度管理のため、また測定結果の信頼性を担保するためにもQCの実施が必要です。
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- 動脈血サンプル中に気泡があると、測定結果に影響が出ますか?
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- 気泡がサンプル中に混在すると測定結果に影響を及ぼします。血液ガス測定値で一番影響が出るのは血液中酸素分圧です。例えば、酸素吸入を受けていない場合、呼気中の酸素分圧はおよそ150 Torrですが、実際の患者さんでは血液中酸素分圧が150 Torrより低い、測定値は実際の値より高い値、すなわち、過大評価してしまう可能性があります。反対に、高濃度の酸素を投与されている患者さんで血液中酸素分圧が150 Torrより高い場合、測定値は実際の値よりも過小評価される可能性があります。
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- 血液ガス分析に何故、専用サンプラーが必要ですか?
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- 血液は採取後、採取直後の状態で安定して存在し続けるものではなく、常に代謝を行い変化し続けます。特に血液ガス分析の対象となっている血中物質ではガス体は常に周囲と平衡する傾向にあり、また代謝により消費・産生されて常に変動します。正確な測定結果を出すためには、この変動を最小限に抑える工夫を凝らしたサンプラーとサンプルの適切な取り扱い手順が必要となります。凝固や外気との接触を抑制することが特に肝要です。適切な抗凝固材が施されてあり、外気との接触を最小限に抑え、気泡を生じさせず、かつ早急に除去が可能な構造であることが必要条件となり、これらの条件を備えている専用サンプラーを用いることが正確な測定結果を出すためには必要なのです。
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- 動脈血サンプルは何故、混和しなければならないのでしょう?
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- 血液サンプルは保存すると分離します。つまり、赤血球が沈降します。サンプルは均一性を確保するため測定前に十分混和する必要があります。測定前の不十分な混和の結果ヘモグロビン濃度(ctHB)は偏りが生じますが、実際の偏りはサンプルのどの部分が測定されるか、つまり沈降部分か血漿部分のどちらかによります。また、 ctHBから演算されるパラメーターにも偏りが生じます。この測定誤差を防止するために推奨される方法は、サンプルを手の中で上下左右によく回転して混和し目視確認で沈降している場合には数分間の混和が必要となります。
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- 血液ガスとヘモグロビンを同時に測定する意味は?
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- 生体内での酸素化状態を把握するためには、酸素摂取状態・酸素運搬状態、細胞への酸素供給状態を評価していく必要があります。健常成人では、1分間で約250mlの酸素を必要とし、酸素摂取は主に肺で行われpO2をみることで評価することができます。また、摂取された酸素はヘモグロビンと結合し運搬されるため酸素運搬能を評価するうえでは、ヘモグロビンを測定する必要があります。当然、ヘモグロビンが少なかったり、酸素摂取状態が悪ければ酸素運搬能力が落ちるため、必要な酸素量が細胞へ十分供給できなくなります。このように、血液ガスとヘモグロビンを同時に測定することで、酸素運搬状態を把握することが可能となります。
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- 血液ガスとラクテートを同時に測定する意味は?
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- 生命維持のために細胞内では高エネルギー物質であるATPを酸素の存在下で産生しています。これを好気性代謝といいますが、酸素が細胞へ十分供給されないと、ATPを産生する代謝が滞り中間代謝産物であるピルビン酸が変化しラクテートが産生されてきます。これを嫌気性代謝といいます。従って、ラクテート測定は細胞レベルでの酸素供給が滞りなく行われているかの指標となります。たとえば、pO2が有る程度の値であってもラクテートが高いということは、肺での酸素摂取はうまく行われていますが、運搬能や酸素を運んでいるヘモグロビンと酸素の結合の度合いが何らかの要因で強くなり、酸素が細胞へ供給されにくい状況を示唆することができます。したがって、血液ガスとラクテートを同時に測定することは、酸素供給状態を把握するうえで有用な指標となります。
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- 血液ガスとビリルビンを同時に測定する意味は?
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- ビリルビン測定は、肝疾患や未熟児新生児管理などで、観られることが多いと思います。特に未熟児新生児管理においては、高ビリルビン血症によるビリルビン結晶の脳への沈着による脳障害のリスクがあります。新生児、特に未熟児は、呼吸障害を伴っているケースが多く、その場合、換気能の低下による高CO2でアシドーシスをきたしています。高CO2は脳関門を麻痺させ、脳に障害を与える物質を通過させやすくしてしまうため、ビリルビンの脳への移行もしやすい状況となってしまいます。従って、ビリルビンを血液ガスと同次元で管理することは、非常に有用となります。
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- 血液ガスサンプルの保存方法が変わったと聞いたがどのように変わったのか?
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- 以前、推奨していた方法は、氷水中での保存でした。この目的は、サンプルの代謝を抑制することで、サンプルの成分(測定項目:pH、pCO2、pO2、グルコース、ラクテート、 イオン化カルシウムなど)が変化してしまうことを防止するためでした。しかし、現在は、室温での保存に変更となっています。これは、シリンジの素材によるガス透過性の違いによる変更です。
ガラスは、ガスに対する透過性がありませんが、プラスチックは透過します。このガス透過性のあるプラスチックシリンジを氷水で冷却した場合、サンプルの酸素解離曲線が左方移動し、しかも血漿中の酸素の溶解度が上昇するため、血液中のpO2が一次的に低下します。この2つの要因はO2シンク(とりこみ装置)のような役割を果たし、プラスチックの壁からO2を引き付け、最終的には、サンプル内のO2含量が増加し、血液ガス測定装置で37℃でサンプルを測定した場合、pO2が上昇する結果となります。
なお、室温で保存した場合においては、サンプル内の代謝は抑制されておらず、これによる測定誤差が生じるため、質の高い結果を得るためには、血液ガスサンプルは、基本的には保存せず、すぐに測定することが重要な要素のひとつとなります。
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- 血液ガスサンプルの抗凝固剤は、ヘパリン以外使用できないのか?
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- 血液ガス測定で使用する抗凝固剤は、ヘパリン以外は使用不可です。その理由は、以下の通りです。
- EDTA塩やクエン酸塩は酸性物質であるため、pHへの影響があります。
- EDTA塩やクエン酸塩の抗凝固作用は、脱カルシウム作用であるため、Ca2+を同時測定する場合、誤差を生じます。
- EDTA塩やクエン酸塩は、主にEDTA-2Naや2K、クエン酸Naですが、NaやKを添加してしまうこととなるため、電解質の同時測定の場合、影響が出ます。