C反応性蛋白(CRP)は肝臓の実質細胞(肝細胞)で合成され、同一のポリペプチド鎖5つから成る、非常に保存性の高い比較的大きな蛋白(分子量は最大120,000)です。健常人の場合、CRPの血漿濃度は通常5.0 mg/L(0.5 mg/dL)未満ですが、感染や何らかの組織損傷・傷害に対する免疫反応が起こると、肝臓での合成が促進し血漿濃度が上昇します。この意味ではCRPは赤血球沈降速度(ESR)検査と同じように、特異性のない器質性疾患の血液マーカーです。血漿CRP濃度の測定は、感染性疾患の診断と管理、一連の非感染性炎症性疾患のモニタリングにおいて臨床的に有用であることが証明されています。最近では、CRP測定が個々の心血管疾患リスクの評価に有用であることが明らかになりましたが、これには高感度CRP測定が必要となります。
背景となる病態生理学
1930年、肺炎レンサ球菌患者の血液中にCRPの特性が最初に特定されました。CRPには連鎖球菌細胞壁のC多糖成分と結合することが示されました。CRPは典型的な急性期蛋白で、その出現は感染や炎症、組織傷害、悪性新生物に対する複雑な生理的反応要素の1つです。肝臓内でのCRP合成を惹起するのが感染、損傷、炎症部位のマクロファージ(貪食細胞)から放出されるサイトカインであるインターロイキン(IL-6)です。CRPはIL-6の「代用マーカー」と呼ばれることもあります。急性期反応を誘発する初期傷害後数時間で、血漿CRP濃度は急速に上昇し始め、24~48時間でプラトーに到達します。CRP濃度のピーク値は急性期反応を引き起こす刺激の性質と重症度によって異なりますが、重度の刺激、たとえば敗血症や急性心筋梗塞の際には、通常の1000倍以上の上昇がみられます。刺激が排除または解消されると、血漿CRP濃度は急速に下降し、その半減期は19時間です。
詳細についてはAcute care testingハンドブックを参照してください。
CRP基準値-正常値とは?
健診受診者のCRP濃度分布はかなり右歪曲分布しており、濃度中央値はほぼ0.8 mg/L(0.08 mg/dL)、その四分位数範囲は0.3~1.7 mg/L(0.03~0.17 mg/dL)です。CRPが10 mg/L(1.0 mg/dL)を超える健常人は約1%に留まり、大部分(90~95%)のCRPは5.0 mg/L(0.5 mg/dL)未満です。この右歪曲分布の原因は無症状疾患だと推測されています。CRPが5.0~10.0 mg/L(0.5~1.0 mg/dL)の範囲内の場合は軽度の(症状疾患)炎症・感染の可能性が示唆され、CRPが10.0 mg/L(1.0 mg/dL)を超えると、臨床的に明らかな急性期反応が起こっていると考えられます。正常なCRP値と異常なCRP値を区別するカットオフ値は検査室によって異なりますが、5~10 mg/L(0.5~1.0 mg/dL)の範囲と言ってよいでしょう。
CRPの測定-CRPとhsCRP測定法の区別
CRP測定法の分析感度は様々です。「高感度CRP」(hsCRP)は、具体的には、基準範囲全体(「正常範囲」0.1~10 mg/L(0.01~1.0 mg/dL))を通してCRP濃度を確実に検知するのに十分な感度のある測定法を指します。高感度ではない測定法(単にCRP測定と呼ばれます)の検出性能は2~10 mg/L(0.2~1.0 mg/dL)の範囲です。高感度ではないCRP測定法は急性期反応に伴うCRP上昇を検知することはできるものの、極めて低い濃度を正確に測定することはできず心血管疾患の危険性の評価には適していません。hsCRP測定とCRP測定法はどちらも同一の物質であるCRPを測定している点が重要です。
CRP上昇に関連する原因
- 細菌感染症
- ウイルス感染
- 真菌感染症
- 敗血症
- 関節リウマチ
- 若年性慢性関節炎
- 強直性脊椎炎
- ライター病(反応性関節炎)
- 全身性血管炎(ベーチェット病など)
- リウマチ性多発筋痛症
- クローン病
- その他
詳細についてはAcute care testingハンドブックを参照してください。
CRPの臨床的有用性
非特異的な急性期反応と、その結果であるCRP上昇であるため、いかなる病気もCRPだけを用いて判断することはできません。しかし、前述の原因の診断において裏付けとなる証拠となり、これら原因の多くにおいて、CRPレベルは疾患活動性や組織障害の程度を正確に反映します。
詳細についてはAcute care testingハンドブックを参照してください。