電子伝達系の反応では、各段階はプロトンのポンプで、このプロトンをミトコンドリアの外に放出する役割をするという化学浸透理論を確立したのがミッチェル氏で、大学に所属せずに、ほぼ独力で完成しました。
藤原正彦氏の『遥かなるケンブリッジ』(新潮文庫, 1994)で、この方の名前に思いがけず遭遇しました。藤原氏がケンブリッジに住んだ際の大家さんがミッチェルさんといい、「自分の父親が化学者で、1978年にノーベル賞を受けているのだから一応たいしたものなのだろう」といわれて驚いたとあり、それがこのミッチェル氏です。ちなみに、大家さんは麻酔科医だそうです。藤原氏は数学者で関心が薄かったのか、肝心のミッチェル氏のノーベル賞の業績を特に紹介はしていません。
参考文献:
1. Mitchell P. Aspects of the chemiosmotic hypothesis. Biochem J. 1970 Feb;116(4):5P-6P. (オープンアクセス)
2. Mitchell P. David Keilin’s respiratory chain concept and its chemiosmotic consequences. Nobel Lecture, 8 December, 1978 (http://nobelprize.org/nobel_prizes/chemistry/laureates/1978)