ラボアジェ Lavoisier A (1743-1794). フランスの化学者、哲学者。
ラボアジエは、「酸素という物質を発見」したに留まらず、「化学反応における酸素の意義」さらに「生物の代謝と物質の燃焼は基本的に同一の現象」と洞察し、物質と酸素が反応して、二酸化炭素ができることも見抜いた。二酸化炭素に化学や生物学の意味を与えたのもラボアジェである。
ラボアジエが天才であることは間違いないが、これほどの「洞察」を単に天分から得られるものと解釈するのは、正直なところ無理だ。100年後200年後から歴史を振りかえれば、ラボアジエの洞察は必然だが、何故ラボアジエが実時間でこれほどの洞察を得たのか、まったくわからない。科学の進歩は通常は一歩ずつギクシャクと進むもので、これほど大きな段階を突然飛び越える例は他にない。私の評価では、コペルニクスの地動説やワトソンの二重らせんでさえ、このラボアジエの洞察には遠く及ばない。
ラボアジエの生い立ち、修めた学業、仲間との討論なども大きな要素だったのだろうが詳しい情報は不明。フランス革命の混乱と大変革の時期で情報が失われたか? ラプラスという有能な助力者の存在は、後のラプラスの業績から推測して、ラボアジエとラプラスの協力が、洞察の要素として大きな役割を果たしたか?
図は Astrup P, Severinghaus JW. History of Blood Gases, Acid and Bases. Munksgaard, Copenhagen. 1986. より