写真:学士院の頁から
オティス(Arthur B Otis:生没年不明)
フェン氏とラーン氏と共に換気力学の創設者ですが、同時に参考文献の共著者でもあります。筆者(諏訪)は個人的にも少しだけ縁があります。内容は以下の通り。(雑誌『呼吸』のあとがきから)
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2005年に、肺ガス交換の古典論文を調べて「Cournand, Fenn, Otis, Rahn, Rileyと直接の接触はない」と書きました。ところが、本棚にある古いHandbook of Physiology(Respiration Volume 1:1964)を眺めて、書き込みからOtis氏と手紙の交換をしたのを思い出しました。この本のp.695 のおわりのほうに「肺血流は吸気で増加し、呼気で減少するのはガス交換を有利にする」 との記述があるのに、それを支持する参考文献がありません。当時、私(諏訪)は人工呼吸では肺の膨らみと血流の位相関係が逆になってガス交換に不利なはずと考えていたので、Otis氏に手紙で問い合わせて、いくつかの文献を丁寧に教えて頂きました。1965年で、私は28歳です。
その時の情報を生かして研究を進め(中略)、1972年になって肺の往復換気モデルを完成して、換気と血流の位相を変えて計算し、当初の予測とおり、Otis氏の述べているとおり同相では有利で逆相では不利と確認しました。
"Suwa et al. Pulmonary gas exchange in a tidally ventilated single alveolus model. J Appl Physiol:32:834-841.1972."で、その参考文献の3,5,22 がOtis氏に教えていただいた文献、発端のOtis氏の文章自体も21として参照しています。その上、忘れていましたが嬉しいことに論文の謝辞にOtis氏に論文を教えていただいたことを記述しています。(後略)
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論文発表から37年、当初の交信から40年以上も経って記録を介して思い出すという記憶の面白さを痛感した事件です。
参考文献:
Fenn WO, Rahn H, Otis AB. A theoretical study of the composition of the alveolar air at altitude. Am J Physiol 1946. 146(5):637-653.