カルシウムイオン(Ca2+)は生体内の主要な陽イオンの1つで、血液の細胞外液中におけるその濃度は約1%です。Ca2+は骨石灰化や、心臓および骨格筋系の収縮、神経筋伝達、ホルモン分泌や血液凝固における一連の反応においてなど、様々な細胞レベルのプロセスで重要な役割を果たします。
Ca2+基準範囲(成人)-例: 1.15~1.33 mmol/L(4.6~5.3 mg/dL)カルシウムの分布と生理学的意義
人体に含まれている約1 kgのカルシウムの実質的にほぼすべて(99%)は骨と歯に含まれています。残りの1%はあらゆる細胞の細胞内液と細胞外液に分布しています。血漿中に循環するカルシウムはたった8.7 mmol(350 mg)で、その総濃度は~2.5 mmol/L(10 mg/dL)です。これら350 mgの内、約 40%はタンパク質(ほとんどがアルブミン)と結合しており、10%は一連の陰イオン(バイカーボネート、ラクテート、リン酸塩など)との複合体として存在します。残り50%は「フリーの」イオン化カルシウム(Ca2+)として、~1.25 mmol/L(5 mg/dL)の濃度で循環しています。血漿中に存在するカルシウムの3つの形態は平衡状態にありますが、生理的に活性なのは Ca2+として存在する部分のみです。
詳細についてはAcute care testingハンドブックを参照してください。
カルシウムはなぜ測定するのか?
カルシウム代謝障害およびそれによるカルシウム濃度(cCa2+)異常は入院患者で多くみられ、特に重症患者における発現率は85%とも推定されています。cCa2+の上昇および低下の両方とも顕著な症状を呈し、重度の場合、生命に関わる恐れがあります。軽度な異常でさえ、特定されず治療されないで放置されると、長期的に健康に有害な影響をもたらします。「大量輸血を受けている患者では、Ca2+レベルを頻繁にモニターし、正常な範囲に保つことが非常に重要です。」
低カルシウム血症の原因
- 副甲状腺機能低下症(PTHの減少)
- ビタミン D 欠乏(産生低下、食事性の欠乏症、吸収不良)
- 慢性腎疾患
- 慢性肝臓病
- 重症疾患
- 敗血症
- 急性腎障害(AKI)
- 急性膵炎
- 横紋筋融解
- 重度熱傷
- 大量の赤血球輸血
- 未熟児(未発達な副甲状腺など)
高カルシウム血症の原因
- 原発性副甲状腺機能亢進症(制限されず過剰に分泌されたPTH)
- 悪性疾患:ほとんどの癌は高カルシウム血症を併発、特に、PTH関連タンパクの過度な生産を伴う肺癌、乳癌、食道癌
- 薬物(チアジド系利尿薬、リチウム、酸中和剤の過剰使用、過度のビタミンD製剤)
- 結核
- サルコイドーシス
- 甲状腺機能亢進症
- 遺伝性高カルシウム血症
原因および症状の詳細についてはAcute care testingハンドブックを参照してください。