血液中の総ヘモグロビン(ctHb)濃度には酸素化ヘモグロビン(cO2Hb)、脱酸素化ヘモグロビン(cHHb)だけでなく、酸素を結合できないヘモグロビンであるカルボキシヘモグロビン(cCOHb)(COHbを参照)、メトヘモグロビン(cMetHb)(MetHbを参照)、スルフヘモグロビン(cSufHb)のようなあらゆるタイプのヘモグロビンが含まれます。したがってctHbは以下のように表すことができます。
ctHb = cO2Hb + cHHb + cCOHb + cMetHb + cSufHb
スルフヘモグロビンは非常に稀であり、ほとんどのオキシメーターでは、報告されるctHbの中には含まれていません。
ctHbの基準範囲(成人)- 例:
男性: 8.4~10.9 mmol/L (13.5~17.5 g/dL)
女性: 7.1~ 9.6 mmol/L (11.4~15.5 g/dL)
ヘモグロビン:構造と機能
血液で運搬される酸素の内、微量(2%未満)は血漿に溶解していますが、そのほとんど(>98%)は赤血球内に含まれるタンパク質であるヘモグロビンに結合して運搬されます。ヘモグロビン分子は「グロビン」と呼ばれる4つのポリペプチド鎖により構成されています。これら鎖のそれぞれには「ヘム」と呼ばれる平らで輪状の分子が付いています。各ヘムの中心には第1鉄状態の(Fe2+)鉄原子があり、酸素分子と可逆的結合を形成します。そうすると、ヘモグロビン分子の構造が変化し、ヘモグロビン分子の残りの結合部位における酸素との親和性が高まります。 詳細については、Acute care testingハンドブックを参照してください。
ctHbはなぜ測定するのか?
- 貧血の診断とその重症度の評価が可能となります。
- 血中総酸素濃度の計算に必要なパラメーター(ctO2を参照)であるため、組織低酸素症のリスクの評価に必要です。
- 臨床的な赤血球輸血の必要性を評価するための主要な指標です。
ctHb低下の原因
貧血は、ctHb低下に起因する臨床病態です。女性の場合ctHbが7.1 mmol/L(11.4 g/dL)未満、男性の場合ctHbが8.3 mmol/L(13.4 g /dL)未満の場合に貧血と診断されます。 貧血の原因は以下を含め多数あります。
- 血液の喪失(出血)
- 鉄の欠乏
- ビタミンB12や葉酸の欠乏
- 赤血球破壊の増加(溶血性貧血)
- 慢性炎症性疾患、癌、慢性腎疾患
- 骨髄の赤血球造成不良(再生不良性貧血症、白血病など)
- 未熟児(新生児期貧血症の主要危険因子)
- 異常ヘモグロビン症(鎌状赤血球貧血症、サラセミアなど)
ctHb上昇の原因
標準を超える高いヘモグロビンレベルは高地に住む人々にみられることがあります。時折みられるその他の原因には以下があります。
- 真性赤血球増加症
- 慢性肺疾患(肺気腫など)
- 一部の腫瘍
- 脱水症状
- 薬物乱用(スポーツ選手によるエリスロポエチン(EPO)乱用など)
- 喫煙
詳細についてはAcute care testingハンドブックを参照してください。